過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第15章 合流
「ピクシスからの書簡だ」
掠れた声でそう告げながら、
小柄な兵士―――の姿をしたナナシは懐から書簡を取り出し
エルヴィンに差し出した。
顔色の悪いナナシを心配しつつも団長としてそれを受け取り
書簡に目を通したエルヴィンは、書かれている内容に眉を顰め
視線をナナシに戻す。
水を受け取り飲んでいたナナシから話を聞く前に、
ミケとリヴァイに彼の発見時の状況を静かに尋ねた。
要約すれば信煙弾が発射された方向にミケが望遠鏡を向けると、
草原を走ってきた人間を発見したのだそうだ。
全力疾走してきた人物に警戒しつつ近づくと、
それが壁の中にいるはずのナナシで、
走っている勢いのままミケの懐に飛び込んできたという・・・。
「何があった?」と問うと「まずはエルヴィンに会うのが先だ」と言われ
只事じゃない事が起こったのだと認識したらしい。
すぐに駆けつけたリヴァイと共にエルヴィンの所へ向おうとしたが、
疲労のせいで動けずミケが抱き上げ運んだ。
運んでいる間に聞けた内容は、夜通し馬で駆けてきたせいで
馬が途中で潰れ、そこから走ってきた事くらいだ。
そんな無茶な行動を起こす程の緊急事態だとはわかったが、その理由をナナシからはまだ聞いていないと二人は語る。
その話を聞いたエルヴィンは「成程・・・」と、
強い光を宿した双眼で二人を見据え、静かに告げた。
「ピクシス司令からの書簡によれば、
何者かによって開閉扉が破壊されその修理にも時間が掛かるそうだ。
壁外調査を早々に切り上げ、余力が残っている内に
壁をよじ登って帰還せよとある」
「・・・・・なん・・だとっ!?」
「・・・・・っ」
リヴァイのミケの表情に驚愕と陰りが生まれる。
突然の出来事になかなか言葉が出ず、押し黙っていると
荒く息をしているナナシが弱々しく声を上げた。
「あと・・・ハンジ・ゾエ宛に手紙を預かっておる。
差出人はモブリット・バーナー。
私の馬や装備を用意してくれたのもそやつだ」
それを聞いたエルヴィンは、テントの外で見張りをしていた兵士に
「すぐにハンジを呼べ!」と命じた。
少しするとハンジが慌ただしくテントの中に転がり込んできた。