過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第15章 合流
―――もうすぐ、夜が明ける。
ウォール・マリア内の廃村にある朽ちかけの建物で
夜風を凌ぎ、束の間の休息を取っていた調査兵団は
出発の準備を始めていた。
エルヴィンが張られたテント内で地図を見ながら
今後の予定を思案していると、パン!という破裂音が聞こえ
顔を上げた。
・・・・・あれは信煙弾の音か!?
まだ夜明け前だというのに巨人が接近してきたのか、と
急いでテントから出て煙の色を確認する。
―――黒っ!
緊急事態を示す色に、兵士達が何事かと騒然となった。
エルヴィンが事態を把握すべく、兵士達に指示を出していると
どこからか「人だ!」という声が上がる。
人、という言葉に「行方不明者が生きて合流したのか?」と考えたが、
エルヴィンの覚えている限り今回の壁外調査での行方不明者は存在しない。
兵士達が浮足立つのを抑えるように持ち場へ戻るよう厳命していると、
集まる兵士達を押し退けてミケとリヴァイがエルヴィンの元へやってきた。
険しい二人の表情と、ミケに抱かれている小柄な兵士の姿を認識したエルヴィンの声色に緊張が走る。
「何事だ?」
「緊急事態には変わらねぇみたいだ・・・テントの中で話すぞ」
リヴァイの返事から、他の兵士にはすぐ聞かせられない内容なのだと
察したエルヴィンは人払いをし、テントの中へ彼らを招いた。
テントの中に入るとミケは小柄な兵士をゆっくり降ろしたが、
疲労が酷いのかその兵士はふらりとよろけ地図を広げていた机に手を着いた。
そこでエルヴィンは違和感に気づく。
調査兵団の制服を纏ってはいるが手には手甲、
足には脚甲を着けていて不必要に思われるそれは
兵団の装備ではあり得ないものだった。
しかし、リヴァイとミケの態度から怪しい人物では無いと判断し
黙って待っていると、その人物が被っていたフードを取り顔を上げる。
壁外にいるはずの無い人物の登場にエルヴィンは目を見開いて驚いた。