過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第2章 金髪碧眼の少年
子供の言葉に私は「あぁ…」と思う。
成したい事があるけど、自分にその力があるのか
図りかねているのだろう。
誰かに背中を押してもらいたい、というところか。
「なら何もするな。耳を塞ぎ、口を閉ざし、心を開かず孤独のまま死ぬが良い。誰も強制はしない。逃げることが悪いとは思わない」
「……っ!逃げるつもりは………」
挑発に乗った子供は声を荒らげかけたが、
ぐっと堪えるように俯き視線を彷徨わせた。
その様子を面白いと思いながら目を細める。
「何を成したいかは聞かんが…この先は賢く利口に生きろ。
無駄な争いは避け、何手先も読んで最終的に勝てば良い。
それまではずっと負け戦だろうが仕方ないと思うしかない」
「あなたは…やはり軍人ではありませんか?」
「違う。ろくでなしと一緒にするな」
「ろくでなし……」
何が可笑しかったのか子供はまた破顔した。
そうしていれば普通の子供に見えるのに父親の死によって
彼の何かが壊れたように思え少し残念に感じる。
自分のような化け物と違い、唯でさえ短い命なのに、
あっという間に死にそうだ。
私が溜息を吐き木箱から腰を上げると、
子供は少し慌てたようだった。
「用件は済んだだろ?もう行く」
「また会えますか?」
真剣な色を帯びた蒼眼が此方を見据えてきたので、
少し誂ってやろうとその小さな身体をぎゅっと抱き込んだ。
「そうだな…お主が成長して良い男になったら、また会えるやもしれん」
「本当に…?」
「お主次第だな。精々長生きしろよ、坊」
「…坊じゃありません。大体、あなただって俺より少し上なだけでしょ?」
「・・・・・・」
「え?違うんですか?」
50歳以上は確実に年上なんだけども…
自分の外見は多分10代にしか見えないだろう。
身長だってこの子供よりやや高いくらいだ。
年齢を突っ込まれるのが面倒になったので身体を離し、
背を向け走り出す。
突然走り出した自分を追い掛けるように、
子供も走り出した。
「ま、待って!」
「断る!お別れだ、坊!」
スピードを上げると子供との距離がどんどん広がり、
焦った子供は声を張り上げる。
「名前!名前教えて下さい!俺の名前は――――――っ!!」