過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第14章 調査兵団の危機
「本当に一人で行くのか?」
日が沈みかけた頃、
開閉扉から少し離れた場所にゴンドラを出してもらい、
それに乗っていると心配そうにピクシスが言った。
「私が一番追いつける確率が高いからな。もうすぐ日が沈む。
巨人の活動がおさまる時間を夜通しで行けば
追いつけぬ距離ではあるまい」
「しかし、活動している巨人もいるかもしれないんですよ?」
馬と装備を用意してくれたモブリットも心配そうに言ったが、
ナナシはその言葉を無視し最後の確認を行う。
地図を広げると、モブリットが調査兵団の進路を説明してくれた。
「今、調査兵団はこの村の付近にいるはずなんだな?」
「は、はい。予定ではそのはずですが、巨人との遭遇で進路が
変更しているかもしれません」
「大凡がわかれば問題ない。自力で探す。
・・・恐らくこの馬一頭を潰してしまうと思うが、構わんか?」
「皆さんが助かるなら馬の一頭や二頭どうってことありません」
モブリットに用意してもらったのは調査兵団の制服とマント、
信煙弾、馬、食糧などで、ピクシスからは立体機動装置一式を
用意してもらった。
駐屯兵団の尻拭いをさせる事に対して
すまなそうに立体機動装置を差し出してきたピクシスの顔は
本当に弱り切った顔で、南側領土の最高責任者の威厳は無かった。
「頼まれていたエルヴィン団長宛の書簡じゃ。
・・・しかし、こんなもの用意せんでもお主らは知り合いじゃろう?
余計な荷物を増やさず口頭でも良かったのではないか?」
「いや、形式は重要だ。私が辿りつけても戯言と取られたら意味が無い。
例え、小童が私の言葉を信じても他の連中が信じなければ
無駄な争いを招くだけだ」
書簡を受け取り大事に懐にしまうと、
ピクシスが「・・・慎重じゃのう」と言って苦笑した。
一人で壁外を走り抜けた人物の言葉を疑うかのぅ、と言う
ピクシスの呟きを無視していると、
モブリットが恐る恐る手紙らしきものを差し出してきた。