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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第14章 調査兵団の危機




「申し訳ありませんが、
この手紙も持って行って頂けませんか?」

「・・・・誰に渡せば良い?」

「第四分隊長のハンジ・ゾエという女性に渡してください」

「ほほぅ?恋文か?」

「ち、違います!」


ナナシの誂いに顔を赤くして否定したモブリットは咳払いをした後、
真剣な表情で言った。


「自分から見た壁の中の状況を認めました。
それにこれを持っていけばあなたの言葉が事実だと・・・
信じてもらえるんじゃないかと思って。
・・・本当は自分が行きたいのに・・・すみません」


実直なモブリットの肩を叩き、その手紙も懐にしまった。

壁の外をゆっくり下りるゴンドラに強い風が吹き、
調査兵団のマントがたなびく。

『自由の翼』が重く感じ、「自分には似合わないな」と零したら、
すかさずピクシスが「薔薇の方が似合っておる」と勧誘してきた。

彼なりに緊張を解そうとしてくれたのだろう。

心遣いだけ受け取り「考えておく」と返して、
周囲に巨人の姿が無い事を確認してからゴンドラから降りると、
ナナシは馬に乗って駆け出した。






広い大地に吹く風と夜の闇はナナシにとって心強い味方だった。

一人で走る荒野は嫌な記憶を思い起こさせるけれど、
惨劇を繰り返すよりマシだと自分を叱咤する。

早く調査兵団に追いつかねば、と手綱を強く握り直し、
闇の中を疾走した。


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