過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第14章 調査兵団の危機
開閉出来ない門の前では調査兵団と駐屯兵団の兵士が
押し問答を繰り返し、怒声が響いていた。
「お願いします!壁外調査に出ている仲間にこの事を伝えに行く為に
ゴンドラを用意して下さい!」
「ダメだ!上からの許可が下りない」
「何故ですか!?仲間を見殺しにしろとでも言うのですかっ!?」
「そうではない。壁の外へ出るためには許可が必要だと
法で決まっているのだ。それを例外的にも許すわけにはいかない」
「・・・・その許可が下りるまでどれだけ掛かるんですか?」
「それは私の与り知らぬところだ」
それなりの地位にいるらしい髭面の男と調査兵団の青年が
言い合いをしているが、進展のない会話に周囲にいる兵士が
殺気立つ。
下手をすれば調査兵団と駐屯兵団が衝突するだろう。
お役所仕事をする駐屯兵団にも苛々するが、
この問題はもっと根深いものなのだ。
駐屯兵団よりももっと上が動いている・・・
・・・・・調査兵団を亡き者にするために。
それが誰なのかは現時点ではわからないが、
駐屯兵団は信用出来ない。
かといって残っている調査兵団も微妙だ。
中に絶対スパイがいるはずである。
だから、慎重に人選しなければならない。
こちらの命も危ないのだ。
やがて、ピクシスが現れ髭面の男に代わって
調査兵団員に説得しに掛かると彼らは渋々引き下がっていった。
ピクシスに頭を下げられては退かざるを得なかったらしい。
引き下がる兵士達の様子を観察したナナシは
一人の男に目をつけた。
左腕を怪我しているのか三角巾で腕を吊っているその青年は
純朴で真面目そうな男だった。
引き下がっても尚、後ろ髪を引かれるように壁の外を見つめている。
その男が兵舎へ向かう路地に差し掛かった時を狙って、
ナナシは男を人気のない裏路地へ引き摺り込んだ。
抵抗されたが、ナナシにとってそれは抵抗とは言えず、
難なく男を抑え込み首筋にナイフを押し当てる。