• テキストサイズ

過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第14章 調査兵団の危機




壁の外への出入口である扉の開閉装置が何者かによって
破壊されたのだ。




開閉扉の守備をしていたはずの駐屯兵団兵士の行方も知れず、
兵団内は騒然となった。

特に壁の守備や補強などを担っていた駐屯兵団の責任は重く、
ピクシスも陣頭指揮を取るために扉へ向かった。


上層部は誰に責任を押し付けるかを会議室で揉めていたようだったが、
そんな会議に参加していられるか!と
現状把握をしに行ったピクシスの判断は正しかっただろう。

彼が行かなければ、故意に破壊された事が有耶無耶のまま
闇に葬られていただろうし、居残り組の調査兵団員の暴走も
止められなかったかもしれない。



慌ただしく兵士が動く中、ナナシもこっそり開閉装置の状態を
見に行った。

とてもすぐ修理出来るものでは無いと認識した瞬間、
全身から血の気が引く。




何も知らずに壁外調査に出かけている彼らは全滅する、と。




『迅鬼狼』の仲間のように、扉が開かない絶望を抱きながら
巨人に食い殺されるのだ。





過去の記憶がフラッシュバックし、
オフにしたはずの感情が溢れ出してくるのがわかった。

膝がガクガクいって立っている事も難しい程、
思い出したくない情景が脳裏に過る。

バラバラの肉片が血の海に漂っているあの光景は今でも忘れられない。



震える身体を叱咤し、誰にも見つからないようにナナシは
この場から立ち去った。


そして必死に最悪の状況を打開するための考えを巡らせる。


最悪の状況は彼らが開閉扉の故障を知らずに
限界まで進み戻ってくることだ。

備品や食糧を消費し、疲弊しきった状態でこの惨劇を知れば
冷静な判断を下せない。

万が一下せる人間がいたとしてもパニックになった兵士のどれくらいが、
指示に従い動けるかだが・・・
ナナシは調査兵団の実情をよく知らないので、
楽観的な思考は切り捨てた。

壁内から彼らにこの事を知らせるのは不可能。

ならば、誰かが直接壁外まで赴き伝えるしか無い。

残っている調査兵団にそんな根性と力量を
兼ね備えた兵士がいるだろうかと思い、
足早に兵士が集まっている門の前に向かった。


/ 1001ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp