第8章 上皇水尾×御門
水尾がかなり苛立っているのは明らかで
…どこからどう見ても元気そうに見える
瑠璃は、動揺していた。
仮病で時間を稼ぐように
春日局さまに言われたけど…
「ごめんなさい!ご挨拶もしなくて…
失礼致しました…!」
瑠璃らしく素直に謝罪する姿に
水尾の表情は一瞬緩んだが
すぐに険しいものになった。
「そんなに俺が嫌えか…
幕府の弱みなんてえのは春日と
遊んでやる口実に過ぎねえんだ。
俺はただ…いつかお前をモノに
するって言ったのを実行しただけ
なんだがなあ…覚えてねえのか。」
「い、家光さまに対してのことかと…」
「瑠璃…しらばっくれるんじゃねえ。
俺はお前が欲しいって言ったはずだ。
だがお前が自分から選ばねぇと
意味がねえ。お前の返答次第では…」
その時、突然襖が開き御門が現れた。
『瑠璃…
アンタ何か良くない物を持ってるねぇ。
頭の悪いネズミに騙されたんだねぇ…
この馬鹿女。』
その時驚いた瑠璃の懐から鏡が落ち
布が外れキラリと輝いた。
その瞬間…鏡には水尾と御門の
二人が映っていたのだった。