第8章 上皇水尾×御門
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日にちが経ち、京への道中
警護は瑠璃の知らない朝廷側の人間
ばかりで落ち着かなかったが…
その人数はかなりのもので、
以前のような危ないことが
起きる心配は無さそうだった。
それでも、駕籠に揺られながら瑠璃は
気持ちが沈むのを抑えきれなかった。
水尾さまか…何度かお会いしたけれど
堂々としていて殿方としては
とても魅力的な方だ。
私は水尾さまが嫌とかでは無くて…
「上様…今日はここで休むらしい。」
考え込んでいる瑠璃の耳に
御簾の向こうから聞き慣れた声が届く。
「あ、麻兎…!」
駕籠の中から覗く瑠璃の嬉しそうな笑顔
を見ると、周囲に気を配り続け
緊張した麻兎の表情もついつい緩む。
「今日はアンタがいくら寂しがっても
添い寝してやる訳にはいかないが…
ちゃんと守るからゆっくり休め。」
「もうっ…///」
他の人間に聞こえない様に囁かれ
耳まで真っ赤に染める瑠璃を見て
麻兎は隻眼の瞳を優しく細め
クククと笑いながら離れて行った。