第6章 麻兎
「但し、来週に控えた
泊りがけの公務だが、
麻兎が護衛の任に着けるのが
出立の翌日からになっている。
道中は今ついている臨時の護衛団
のみになるが…」
表情は相変わらず冷たいが、
瑠璃の身を案じてくれているようだ。
「大丈夫です。私も用心しますし…
麻兎が途中からでも来てくれると
聞いただけですごく心強いです。」
麻兎を信頼しきった笑顔は、ここ最近
瑠璃が見せたことが無いものだった。
火影が去ってから、人知れず不安な日々
を過ごしていたのかもしれない。
千人以上の男たちが自分一人にかしずく
大奥という世界…
そこで瑠璃は孤独だった。
「…〝上様〟は
そのような笑い方はしないと思うが?
まぁ良い。あまり気を抜くなよ。」
「はーい…」
もしかしたら心配してくださったのかと
思って、それも嬉しかったのに…
やっぱり気のせいだよね。
それにしても、久しぶりに麻兎に
会えるの本当に楽しみだな。
もしかしたら…
火影が今どうしているのかも
聞けるかもしれない…