第14章 日向
突然の話に、瑠璃の思考は止まった。
私が自由に…?
瑠璃の濡れたままの瞳が
ぱちぱちと瞬いた。
「ふっ…何て表情をしているんだ。
うれしくはないのか?」
「まだちょっと良くわからなくて…
でも…」
これからはまた、前の様に
好きな時に好きな場所に行ける。
顔も見えない相手から
命を狙われることもない…
好きな殿方の子を生み、普通の家庭を…
「うれしい…です。
…ありがとうございます。」
「良かった…
瑠璃は俺の分も幸せになってくれ。
もちろん普通の女の、幸せだ。」
「え…日向様…?」
「あぁ、すまん。
おかしな物言いだったな。
俺は軟弱な身体で将軍家の男子として
生まれてきたことに引け目を
感じてきた。
だがこれからは政が俺の生き甲斐だ。
人に求められ仕事に打ち込む
ということは男子一生の悦びだ。
心残りなどは…」
日向は熱っぽい瞳で瑠璃を見た。