第14章 日向
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夕餉が終わり、瑠璃は日向の部屋で
酒を酌み交わしていた。
「美味しい…!」
「だろう?もっと飲め…」
日向は酒が強い方では無かったが
緊張感からか今日はかなり飲んでいた。
瑠璃の杯にさらに注ごうとすると
思いの外近付きすぎていて
日向の手を制しようとしていた瑠璃と
肩が触れ合ってしまう。
「あっ…ごめんなさい…
私あまり強く無いので…もう…
日向様もお顔真っ赤ですよ?」
「いや…これは…
…瑠璃。俺の話を聞いてくれるか」
日向は自身の幼い頃の話から
語り始めた。
何かあるとすぐ寝込んでしまう自分に
活発な妹、家光…
子供心にいつも羨ましかった。
焦れば焦る程言うことを聞かない身体。
そして、家光が次期将軍になることが
告げられた日のこと…
「瑠璃が影武者として駿府に見舞いに
来た時、俺は生まれて初めて
家光と分かり合えたと感じたんだ。
…あの日は楽しかった…本当に。
だがあれは家光では無かったのだな…」
「日向様…!ごめんなさい…私…」