第11章 緒形の診察室〜午前編〜
「いや、噂で…
緒形殿が皆の相談に乗っているが
なかなかの評判だと聞いてな…
本日は確認しに参っただけだ。」
「おやおや…春日局様自ら私ごときの
噂のご確認でございますか…
余程のお悩みがあるんでしょうか?
例えば…恋の…」
「け、決してその様なことは無い!
ある者が話していた悩みだ。
私のことではない。
一人の女性のことを放っておけず、
気付くとついつい考えてしまい…
しかしながら顔を見ると心とは裏腹な
態度を取って時には泣かせてしまう
様な行動のことを…」
「それは恋でございますね。」
「その様な筈は無い!
…とその者も言うであろう。」
「泣き顔を見ても可愛くて、
でも笑った顔はもっと可愛くて…
その笑顔が他の殿方に向いた時は
心の中がもやもやと…」
「確かに…」