第2章 スケッチブック/黄瀬
するとそこには見たことないページが沢山あった。
「えっと…これは、入学してすぐの。これはゴールデンウィーク明けぐらい」
「…全部、俺?」
かっちり線が描かれたものや荒々しくその場を切り取ったようなもの。
全部バスケの動作だというのは分かる。
「うん。…気付くと手が勝手に動いてる。だからね、これは黄瀬君用のスケッチブック。
いつも練習に来て見えないとこでずっと描いてた」
愛おしそうにページをめくっていく。
後ろの方には今日見せてもらったのと、さっき描いたであろう絵があった。
「…ねぇ、ちゃん」
「うん?」
「このスケッチブック、もうすぐページ無くなるっスね」
「うん。新しいの買わなくちゃいけないなって思ってた」
「そんなになるぐらい、俺のこと見てたの?」
「……え、あ、その…」
少し真剣な顔で聞くと、顔を真っ赤にして頷いた。
それがまた可愛くて可愛くて意地悪をしたくなってしまう。
「耳まで真っ赤っスよ?」
そうわざと囁くとスケッチブックで顔を隠された。
「意地悪」
「俺、好きな子ってなんかいじめたくなっちゃうみたいなんス」
「…は?」
「…あ」
言うつもりは無かったのに。そう思ってちゃんの方を見るとスケッチブックを落として顔を真っ赤にしてこっちをずっと見ていた。
「……えっと、」
「あああまって自分でっていうか俺から言う!」
「は、はい」
落としたスケッチブックを拾いあげて手渡した。
その時に見た顔は真っ赤でその顔も可愛くて。
「あー、あの、俺ね、ちゃんのこと好き」
意を決して言ったその言葉は案外口から簡単に飛び出た。
思わず顔を逸らしてちゃんの反応を待つと、たどたどしいけど返事が返ってきた。
「…その、私、言葉足りないし絵描くことしか、取り得ないけど…よろしくお願いします」
控えめに笑ったその顔が可愛すぎて思わず抱き締めてしまいそうになる。
ひとまずは立ち話もなんだし早急に彼女のことを送り届けることにした。
「ね、ちゃん」
「なに、黄瀬君」
「手、繋いでもいい?」
「うん。…黄瀬君の手、大きいね」
「…あんまり可愛いこと言わないで欲しいっス」
「そういうつもりはない…」
「俺のこと送り狼にしたいわけ?」
「ち、違うっ…!」
そうからかってみると顔を真っ赤にした。