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【黒バス】まどろみ時間

第2章 スケッチブック/黄瀬


俺が高校に入って恋をした女の子はめっちゃめちゃ絵が上手くて少し抜けてるっていうかマイペースな女の子だった。
俺が彼女に恋をしたのは入学式の時。
彼女は桜の木を眺めていた。手には大きなスケッチブック。
入学式も始まるし…てことでほっとけなくってつい声をかけた。

「何して…うわすっご、めっちゃ上手い!!」
「…スケッチ。別に、このぐらいなら見たままだし普通」
「普通、て。見たままでもぜんっぜん凄いってば!
ね、君の名前は?俺、黄瀬涼太!」
「 」
「ちゃん!よろしくっス!」
「…あ、うん、よろしく」

それが俺らの出会いだった。多分、いわゆるそれは一目惚れだったのかもしれない。
入学式が終わった後のクラス編成で同じクラスだって知った。

「ねね、ちゃんは美術部?」
「入る気ない」
「えー、なんで?!」
「部活とかめんどくさい」

そう言う考えもあるのか。そう素直に思ったのは後にも先にもこれが最後かもしれなかった。

「ねーちゃん!」
「……」
「今日は何描いて…」
「黙って」
「ハイ」

俺が部活に入ってからも教室は一緒だし一緒に話すことは多かった。
っていうか俺が一方的に話しかけてるだけなんスけどね。

ちゃんは休み時間のたびに絵を描いていた。
手を休めずにだけど、ちゃんは話を聞いてくれてる。
まぁこうやって時々黙ってて言われるんだけど…俺はそれでも良かった。ちゃんの側に居たくて、いつも言われたとおりにしてた。
そして時々顔を上げて笑ってくれる。
それがまた可愛くて可愛くて仕方なくて、それを顔に出さないようにするのがすげー大変。

「…出来た」

満足そうな笑顔を浮かべる彼女。
いつも通り「見せて」ってお願いすると少しだけ困った顔をして見せてくれた。
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