第14章 私の彼は 【高杉晋作】
高杉晋作視点
__________
藍屋に行って、艶子に会いに行こうと思った。
風邪が治ったことを報告しようかと思ってな。
艶子に看病してもらうのは悪くない。
折角藍屋に行ったが、使いで艶子はいなかった。
俺が泊まっていた宿付近の小間物屋にいると聞いて、そちらに足を向けていた。
…大体、暑い中使いに出す藍屋をどうかと思う。
艶子の白い肌が焼けたらどうするんだ。
あいつのことだから、傘をささずに行ったらしい。
そんなことを考えていると、小間物屋からそう離れてない距離の道を、艶子が歩いているのが目に入る。
艶子もこちらに気づき、少し微笑んでくる。
俺は迷わず艶子の方へ足を運び、礼を言おうと思った。
だが、少しの異変に気づく。
艶子の顔は真っ赤に紅潮し、覚束ない足取り。
おまけに虚ろな目をしている気がするのは気の所為だろうか…
「よう、艶子。この間はすまなかった」
俺は艶子の目の前に立つと、いつも通りに不敵な笑みを浮かべて接してみる。
その瞬間艶子の体がふらつき、倒れそうになる。
この出来事にとても慌てて、らしくもなく驚いたけれど、何よりも先に艶子の腕を引っ張り倒れるのを防いだ。
俺は支えていた艶子の膝裏に手をいれ、抱き上げる。
(俗に言うお姫様抱っこ…♡ By梅)
艶子の体はとても軽かった。
今まで女は星の数ほど抱いてきたが…
抱き上げることなど一度もなかった。
艶子の赤く火照った顔を指で優しくなぞる。
俺は宿へ向かった。