第14章 私の彼は 【高杉晋作】
艶子視点
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「…ん」
重く響く頭。
私は、薄っすらと目を開ける。
(あれ、お使いにいって、簪買って…)
私はハッとなる。
あのあと、確か高杉さんに会ったはずだ。
あたりを見渡すと、何やら書物を見ている高杉さんを見つけた。
…高杉さんでも、書物を読むらしい。
やっぱり高杉さんに会ったのは幻覚とは違ったみたいだ。
「高杉さ…」
彼を呼ぼうと思って、声を出したけれど掠れた声しか出なかった。
それでも高杉さんには聞こえたみたいで、高杉さんはバッと振り向くと私の元へきてくれた。
「…艶子、平気か?」
いつもとは違う高杉さんの優しい声。
私は声が出すのが辛くて、こくりと頷いた。
「俺のをうつしてしまったみたいだな…」
高杉さんは申し訳なさそうにしている。
若干高杉さんらしくない気もするけれど、まあいいかな。
…これで薬嫌いが治るかもしれないし。
「京を出るのは明後日にした。だからゆっくり休め」
「藍屋には攫ったと言っておいたぞ」
そういった高杉さんは、いつも通りに不敵な笑みを浮かべた。
その笑みに安心して、私はまた微睡みの中に吸い込まれた。
(熱っぽい顔しやがって…生殺しか)
高杉さんは、心中穏やかではなかったようです。
END