第14章 私の彼は 【高杉晋作】
「小間物屋に行って欲しいんやけど…」
秋斉さんに突然のお使いを頼まれたのは、掃除を終えてから少ししか経っていない頃だった。
「花里ちゃんとですか?」
「いんや、花里は菖蒲と茶屋へ行くと言うてはる。全く、仕事を放って何をしてるんやら…」
扇で口元を隠しながら、秋斉さんはそそくさと部屋に戻ってしまった。
(仕方ない、体は怠いけどお使いぐらいならきっと行けるよね)
私は部屋に戻り、髪を軽く結い直して化粧をした。
若干、自分の顔色が良くないことに目を瞑る。
これくらいどうってことないはずだ。
階下に下りて、お使いの支度を済ませる。
途中で花里ちゃんに会って、「代わる」と何度も言ってくれたけれど、私は頑なに断った。
今日は、一応高杉さんに会いたいから。
高杉さんは明日に京を出るらしくて、風邪の具合も聞きたかった。
(元気にしてるといいんだけど…悪化してないかな?)
そんなことを考えながら、置屋の入り口をくぐった。