• テキストサイズ

枡屋 〜艶が〜るの向こう側〜

第13章 夏祭りと 【古高俊太郎】





__________


「しゅ…ま、枡屋さん、お待たせしました」


今日は公の場で俊太郎様とは呼べない。


昔は枡屋さん、なんて言えてたのに、今ではすこし照れくさい。


「大丈夫や、あんさんを待つ時間はわてにとって幸せな時間や」


その言葉に私は微笑んだ。


島原の大門を抜けて、見えてきたのは色とりどりの明るい色たち。


「夏祭りは久々やな…人が仰山おる」


俊太郎様は、あたりを眩しそうに目を細めた。


「そうですね…」


沢山の人たちが行き交っていた。


夏祭りはこの時代にきてから2回目だけれど、現代と変わらず賑やかさは凄かった。


「的屋でもやるか?」


「矢取り女と一晩共にしてみてえなぁ」


まわりからはそんな会話が聞こえてくる。



「迷子になったらあかんよ」


「なっ…!」


そう言って、クスクス笑う俊太郎様は、ある方向を見て足を止めた。


「…綺麗やなあ」


目に留めた先にあるのは…矢取り女。


私の頭は思考停止した。


頭にあるのは…何故?の一言に尽きた。


(もしかしたら、俊太郎様も矢取り女の方がいいのかな)


そう思ったら、涙が滲んでくる。


手は繋いでなかったので、私は気配を殺して俊太郎様から離れようとした。


「…?どこに行くんや、艶子はん」


…暴露てしまった。


/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp