第13章 夏祭りと 【古高俊太郎】
艶子視点
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「うーん…」
私は、悩んでいた。
書いては手を止め、失敗したら捨て、の繰り返しだった。
最近、崩し字がだいぶ書けるようになったから、手紙を書いていたのだけれど。
「何を書いてはりますのや?」
「俊太郎様に、夏祭りのお誘いをしようと思って…それを書いてるんです」
「へえ、わて宛どすか…ほんに嬉しいもんやなあ」
…ん?
「………えっ」
「艶子はん、集中し過ぎや」
そう言って苦笑しているのは紛れもなく俊太郎様で。
今さっき、手紙の内容を自分から暴露したことに恥を感じる。
ましてや、俊太郎に話してしまったとは…
「顔が真っ赤や、艶子はん」
「……な、何で置屋に…!?」
「たまたま近くを通ったさかい、逢状を出すついでに艶子はんの顔を見ておこうと思ったんや」
「そ、そうでしたか……」
「そや、その手紙はもう書けたようやな。わてに送ってくれはるんか?それとも…」
「て、手紙はいいです!!え、えっと…来週の夏祭り、一緒に行けませんか?」
「喜んで行かせてもらいますえ」
俊太郎様の微笑みに、私は大きく安堵した。