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枡屋 〜艶が〜るの向こう側〜

第12章 夏祭りと 【高杉晋作】




__________


「…あれ、はぐれちゃったかな…」


私は、お団子を買って戻ると、花里ちゃんと橘田さんを見失ってしまっていた。


「どこ行っちゃったんだろう…」


一人だと徐々に不安になってくる。


2人を探し歩いているうちに、お祭りの賑わっている方から少し外れてしまっていた。

慣れない場所で迷子になるのは、不安で怖かった。


そのとき、


「こんなとこにおったんか、艶子はん」


橘田さんの声がして、振り返る。


「橘田さん…!」


「花里はんが、あちらの方で待ってると言ってはるんや、急いで行こう」


橘田さんは私の腕を掴み、お祭りのさらに外れの方へ歩き出す。


そのとき、私はとても油断していた。



__________


「本当に、こっちに花里ちゃんが待ってるんですか?」


お祭りの賑わいが、本の微かに遠くに聞こえるくらいのところまで、私たちはきていた。


「…艶子はん、あんさんはほんまに綺麗や」


「…え?」


急にわけのわからないことを言われて、驚く。


「あんさんを、わてだけのモノにしたいんや」


そこで、私は初めて気づいた。


ここにも、この先にも花里ちゃんはいない。


ただ、この人の狂っているような気がした。


「…や、やだ……」


あたりは山のようなところで、人影なんて全くない。


橘田さんの目は、もう優しい瞳なんかじゃなくて、私を映していなかった。


両手首を思い切り掴まれ、身動きがとれなくなる。


そのままドサリと地面に倒される。


「いやっ…!」


いくら抵抗しても、男の人の力には全く敵わなくて。


私はぽろぽろと涙をこぼしていた。


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