第12章 夏祭りと 【高杉晋作】
「……実は明日のうちに京をまた出なくては行けなくてな。すまないが、一緒には行けない」
そう言われて、頭が一気に冷える。
高杉さんと一緒に行けたらこうなるのかな、とか…
考えて舞い上がってた自分が馬鹿みたいに思えた。
「そ、そうですよね…!高杉さん忙しいですもんね…急に誘ってすいませんでした」
「なんだ、落ち込んでいるのか?」
高杉さんが面白そうに聞いてくる。
「そ、そんなことないですよ!きっと花里ちゃんや菖蒲さんたちと一緒に行けるでしょうし、誘ってくれる旦那さんは沢山いますし」
私は引きつった笑いで答えたけれど、高杉さんにはどうも最後の一言が気に食わないのかもしれない。
それを聞いた瞬間、片眉がピクリと動いたから。
だけど…
「……そうか、それならば安心だな」
さっきのは気の所為みたいで、不敵な笑みで爆弾を投下された。
無性に悲しくなって、顔が歪みそうになるのを必死に耐えた。
(正直に寂しいって、言えなかった)
私にはこの思いが、頭をずっと支配していた。