• テキストサイズ

枡屋 〜艶が〜るの向こう側〜

第10章 夏祭りと 【結城翔太】





____________



「すいませーん」


お昼頃になって、入り口から聞き慣れた声が聞こえてきた。


私は、慌てて自室から出て、階下にある玄関に走って向かった。


「翔太くん!!」


廊下を少し走った先に、見慣れた姿が見えた。


「艶子!走ったら危ないだろ?」


父親のように注意する翔太くんに、少しだけ舌を出した。


「全く…そうだ、今少しだけ時間あるか?」


「?うん、あるけど、どうしたの?」


翔太くんは、額に浮かんだ汗を拭うと、置屋前にある椅子に腰掛けた。


(走ってきてくれたみたい)


汗と、少しだけ切れた息でわかった。


「今日さ、体門を越えた少し先で、大きな花火大会があるみたいなんだ」


翔太くんは目元を下げて言った。


「花火大会…?」


「そう、懐かしいだろ?花火大会なんて。屋台とかも出るらしいんだ」


元のいた時代の、お祭りを思い出す。


「夏祭りかあ…!いいなあ…」


「そこで艶子、一緒に行かないか?」


「一緒に?……って、え!?」


「だ、駄目だったか?」


子犬のように、少しシュンとなった翔太くん。


「い、いやそうじゃなくって!!…今日仕事が…」


「仕事なら、他の新造に任せたらええ。今日は休みをあげるさかい」


急な声に振り向くと、秋斉さんが微笑んでいた。


「秋斉さん…いいんですか?」


「今日だけや」


「ありがとうございます!翔太くん、楽しみだね!!」


私は翔太くんに向かって微笑んだ。


/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp