• テキストサイズ

枡屋 〜艶が〜るの向こう側〜

第10章 夏祭りと 【結城翔太】





艶子視点
____________



よく晴れた、夏のある日の朝。


私は置屋の外で箒をはいていた。


「あっつー…」


額から滴る汗が暑さをより感じさせる。


こんな日はアイスが食べたくなる。


だけど、この時代にはそんなものないわけで。


そんな自分を奮い立たせるために、振袖を肩まで引き上げる。


「朝からほんにご苦労さん」


そんな、涼しげな声が背後から聞こえてきた。


「秋斉さん!おはようございます」


私ははいていた箒を止め、秋斉さんに振り返った。


「えらいこと汗かいてはりますな…暑かったやろ?もうこのへんで終いにしたらええ」


汗のことを軽く笑われ、少し恥ずかしくなる。


何故秋斉さんは全く汗をかいてないの…?



「わかりました、箒を片付けてきますね!」


そういって、足早に去ろうとしたとき、


「あ、そうや艶子はん」


…引き止められた。


恐る恐る振り返ると、秋斉さんはにやりと笑う。


「先程番頭はんに言われたんやけど、結城はんが昼時に置屋を訪ねてくるそうや」


「えっ、翔太くんが?」


翔太くんの名前が出てきて、過剰に反応してしまった。


「そや、なんでも急ぎの用らしくてな…逢引やったらええね」


秋斉さんはそんな私を横目に、からかった。


「あ、逢引なんて…!し、失礼します!!」



私は慌てて箒を片付けに行った。



/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp