第6章 夏祭りと 【土方歳三】
「明日は祭りやさかい。たまには遊んでくるのもええと思いますえ」
秋斉さんのこの一言で、私を含めた置屋の子達は嬉しそうな声をあげた。
「わあ!お祭りだって!」
わたしは隣にいる花里ちゃんに声を掛けた。
「久々やなあ!秋斉はん、珍しいこと言うてはるな…明日雨でも降るんとちゃう?」
花里ちゃんは悪戯っ子のような顔をして、くすくすと笑った。
「ふふっ、そうだね。どんな屋台が出るのかな?」
「わて、名代で座敷に出た時にな、旦那はんに『願いが叶うもの』を売ってる屋台出るって聞いたんや!」
「『願いが叶うもの』?」
「そうみたいなんや。気になっとるんやけど、明日行こうかと思うて!」
私は、満足そうに微笑む花里ちゃんを横目に、土方さんのことが頭に浮かんでいた。
(願いが叶う、か…土方さん、連れて行ってあげたいな)
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こうしたことがあって、わたしは土方さんを夏祭りに誘ったのだけど…
頑なに断られると、流石に傷つく。
目から零れそうになった涙を無理やり引っ込めて、鼻を啜った。