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ふたりだけのdestiny

第5章 初めて信じた赤い糸


「……これ、俺のじゃん。」


一瞬驚いた表情を見せた二宮さんだけど、やっぱり照れ隠しなのか、俯きながら財布を取り出した。


「あっお金は大丈夫です!!」


「そんなことできねぇよ」


「ほんとに、いいんですって。今日は、あたしが誘ったんですから。だから、本当にいらないです」


あたしが頑なに断るもんだから、二宮さんも仕方なさそうに財布をしまった。


館内に入り、席について暗転するまでしばらく時間があった。


「それにしても、まさか俺のだとは思わんかった」


「二宮さん、ご自分のはあんまり見ないんじゃないかなって思ったんですけど、二宮さんとどうしても見たくて………」


「……ちゃんがそんなこと言うなんて、意外だな」


「…………意外って、失礼な……」


「あっいつものちゃんだ笑」


「…っ、もう、なんなんですか」


この人は、なんでこう、人の心を掻き乱すかなぁ…。


そんなような会話をしていると、照明が落ち、予告が始まる。



約2時間後。


あたしは人生最大の告白をするんだ。


望んでない答えが返ってくるかもしれない。


それでも、あたしは二宮さんに今の気持ちを伝えるんだ。


告白は、自分の気持ちを伝えるためにするものだ。


松本さんに言われた言葉。


あたしは、二宮さんが好きだと。


…はぁぁー…頭ではカンペキだけど、言えるかな。


そればかりに神経使って、全然映画に集中出来ないまま、とうとうエンドロール。


帰っていく人たちもまばらに隣を見ると、暗闇でもバレないようにと顔を下に向けてる二宮さん。


「……に、二宮さん?」


あたしは周りに聞こえないように話し掛けた。


「ん?」


「…さ、最後のシーンって、神楽くんかリュウくんか分かりにくいですね」


「あぁ、もともとどっちか分かるようには演じてないからねー」


人が少なくなって、ニッコリと笑う二宮さん見てると言いたいことがなかなか言い出せない。


「そ、そうなんです、ね」


やばい。


緊張し過ぎだ、あたし!


あわあわしてるあたしを、二宮さんは不思議そうに見てる。


「あっの、…か、神楽くんも良いけど、リュウくんも好きだな、あたし……へへ……」

何じゃそりゃ!

全然言えてないじゃんか!

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