第3章 転校生
彼は私からできるだけ離れて座っていた。左の足に置かれた手はぎゅっと握りしめられ、青ざめた肌の下から腱が浮かび上がっている。その手がゆるめられることも、一度もなかった。
白いシャツの袖は肘までまくってあったけど、腕は驚くほど引き締まっていて、白い肌の下に筋肉がついている。がっちりしたお兄さんの隣でやせて見えたのとは、大違いだった。
授業はほかのクラスに比べて長く感じられた。長い一日がようやく終わりに近づいているかなのか、それとも、彼のこぶしから力が抜けるのを待っていたからなのか。結局、力が抜けることはなかった。
いくらなんでもひどい。これでは原作でベラが傷つくわけだ。
とにかく、私には関係ない。私はベラじゃないし、深く関わるつもりはない。今日初めて会ったから、彼は私のことなんて知らないはずだ。