第2章 始まりは突然に
夏も終わりに近付いた8月の下旬。
昼は太陽が照りつくが、夜はだいぶ涼しくなった。
みんな帰省ラッシュで大通りはいろんな人が行き交っている。
そんな大通りと少し外れた所の繁華街にある一軒のホストクラブ。
中はドレスを着込んだ女とスーツを着込んだ男とで溢れかえっている。
その中でも一際目立つ席が1つ。
女を周りに何人も侍らせ、真ん中にふてぶてしく座っている背の高い奴、それが俺だ。
女1「潤く〜ん、この間ドライブ連れてってくれてありがとう♪今日はいっぱい頼むからね♪」
『おお、サンキュっ♪でもあんま無理しなくていいぞ?たまには自分の為に金使え』
女1「潤君やっさし〜♪でもあたし、自分の為にお金使ってるよ?潤君に尽くす事が、あたしの幸せなの♪」
『ははっ、お前良い子だな〜!!お前みたいな子チョー好きだわ♪』
女1「嬉しい〜♪」
女2「ねぇ〜潤、その子とばっかイチャイチャしてないで私ともしてよ〜!!」
女3「え〜抜け駆けズルい!私だって潤君とイチャイチャした〜い!!」
女4「あたしも〜!」
『ああ、悪りぃ悪りぃw 落ち着けって、誰も逃げねーからよ♪』
そう言って女達を軽くあしらう。
はたから見ればただホストが女を侍らせている様にしか見えない。
だが正真正銘、俺は女だ。
乳だってあるし股間にアレはぶら下がってない。
では何故俺がホストをしているのかと言うと、それはとても簡単な事。
…ノリだw
中学の時にたった一人の身内だった父親を亡くしてどうやって生きて行こうかと悩んでいた俺に、この店のオーナーが『うちで働かないか?』と声を掛けてきた。
施設になんて入りたくなかったし、たった13歳のガキを雇ってくれるとこなんか他にあるわけもなく、俺は喜んで話に乗った。
始めは単なる雑用係りだったが、客の一人が俺を気に入り女という身分を隠してその客が来た時のみホストをするようになった。
だがそうしている内に他の客も俺を指名し始め、人気が高かったことから俺は正式にこの店のホストになった。
元々社交的で人懐っこい犬属性の俺は客人気は良く、今ではこの店のNo.1の座に君臨している。
見た目も男っぽく背も男と比べてもかなり高いので、女とはバレていない。