第2章 感情
「あっ。ギル、おかえり~」
家の中に入ると、両手にトマトを持ったエプロン姿のフェリシアーノちゃんが駆け寄ってきた。
「…おう、ただいま」
「……どうしたの…?元気、ないよ?」
俺様の元気が無い訳ないだろー、とおどけて笑って見せる。
流石俺様の名演技。
胸の内がバレることはなかった。
そのまま俺は俺専用に貸された部屋に行き、大の字に寝転がる。
ぼーっと天井を眺めていると、色んなことを考える。
考えたくなくても思考停止は故意に出来ない。
出来るやつがもし居るんなら、是非ともコツを教えてもらい位だぜ。
会えない、って思うほどに会いたくなるのは無いものねだりなのかもな。
だけど、ちゃんと理解はしてんだ。
会うたびに会いたい気持ちが多くなるから、会わない方がいいってこと。
それなのに、「会いたい」って言葉にして伝えてやったらどんな反応すんだろうな、とか、考えてにやけてる俺。
気持ち悪いと自分でも思う。今だけな。
「なんで、生きたい人間が生きられないんだよ」
泣きたい気持ちを抑えて本音を呟く。
ここ最近、俺が俺らしくない。
こんなに湿っぽい性格じゃなかったはずだ。
こんなに特定の"人"に会いたいと思ったことはないはずだ。
こんなに物事を深く考える側じゃないはずだ。
こんなに、こんなに、こんなに
俺は今まで、こんなに人を想ってやれたことがあったっけか?