第7章 -失恋-(高尾和成)*★
実はくるみちゃんが告られてるトコ、
見たことがあった。
見たことは言ってないし、
そのことについては相談されてない。
だから、オレは
知らないふりをしている。
でも、彼氏ができたと言わないから、
その男はフッちゃったんだろうな。
オレの中に安心している自分がいた。
「高尾くんのほうがモテるよ?」
「オレのはモテるっつーか、
なんかファンみたいな感じじゃん?」
「そうかなぁ?
わたしの周りにも
高尾くんいいなって言ってるコ、
たくさんいるよ。」
「えっ⁈マジ〜?紹介してして(笑)」
「え…?うん。」
オレはいつものノリで返すけど、
ますますくるみちゃんのテンションが
落ちていくように感じた。
「なぁ、くるみちゃんて、
真ちゃんのことが好きなの?」
「…⁈なんで…そう思うの?」
「ん〜?なんとなく?
真ちゃんいる時のほうが、
くるみちゃん、楽しそうだし。
お似合いだと思うんだけどな〜。」
自分で言ってるのに、
心がズキンと音を立てて痛んだ。
もし、2人がうまくいったら、
オレは1人になっちゃうから…かな。
「緑間くんと…
付き合ったほうがいいってこと?」
「え?うん。いいと思うぜ?
お似合いだし、真ちゃんもいつも
くるみちゃんのこと見てるしな〜。
オレのホークアイ、
けっこうすごいんだぜ〜?」
オレが言うと、くるみちゃんは俯いていた。
「………ない。」
「ん?」
「高尾くんのホークアイなんか
ぜんぜんすごくない!
高尾くん、なんにも見えてないよ!」
「え…?くるみちゃん?」
くるみちゃんの怒鳴る声…
初めて聞いた。
「あ…ご…ごめんなさい。
あ、家そこなの。もう大丈夫だから。
ありがとう。
高尾くんも気をつけて帰ってね。」
「ちょっ⁈くるみちゃん…⁈」
オレの呼びかけにもこたえず、
くるみちゃんは
そのまま走り出してしまった。