第5章 -彼女-(若松孝輔)
「孝ちゃん!孝ちゃんてば‼︎
速い〜っ。どこまで行くの⁈」
すみれの声にハッとして、
オレはチャリを止めた。
気づいたら、中学の近くの
運動公園まで来ていた。
中学んとき、ココですみれの
走る特訓したっけ…。
「でも、悔しいな〜。
今吉に騙されてたなんて…」
すみれは自転車からおりて、
苦笑いしていた。
忘れてた…オレ、さっき咄嗟に…
「ねぇ…さっきの…」
「さっきのってどのさっきだよ⁈」
オレは思わずとぼけた。
とぼけきれてないが…。
「ん?さっきのって…
”すみれはオレんだ”とか?」
「うわ〜〜っ!!
ハッキリ言うなって…!」
「な〜んだ…ウソだったの?」
「ウ…ウソじゃねーよ。
つぅか…おまえこそ…その…
”オレの”でいいのかよ…?」
「えっ…?う…ん。
孝ちゃんのが…いい。ダメ?」
か…可愛すぎる…っ。
オレはすみれを抱きしめてしまった。
でも、もう気持ちを伝える!
そう心に決めた…。
「すみれ…」
「…孝ちゃん?」
「ずっと好きだった。
オレの…彼女になってくれ!」
「はい。」
すみれもギュッとしてくれた。
「もう今吉さんの彼女のふりとか
すんなよ?」
「うん。」
「つか、さっきの!
本当にキスするつもりだったのかよ⁈」
「そんなわけないでしょ⁈
今吉だってわざとに決まってる。」
すみれは笑って本気にしていないが、
今吉さんならわからねぇ。
あの人やっぱり…。