第5章 -彼女-(若松孝輔)
部活が終わり…
すみれが校門の前で待っていた。
でも、待っている相手はオレじゃない。
「すまんなー。待たせたな。」
すみれは今吉さんと行ってしまった。
「駅前のマジバっつってたぞ?」
「うわぁっ…す、諏佐さん⁈
なんすか⁈」
オレの後ろから
いきなり諏佐さんが話しかけてきた。
「素直になれよ?」
「別に…オレは…」
「じゃ、お疲れ。」
諏佐さんが
見えなくなったのを確認して、
オレはチャリを全速力で漕いで、
猛ダッシュでマジバに向かった。
…いた‼︎
窓際の席に今吉さんとすみれが
並んで座っていた。
向かいには知らない女がいた。
相手の女も
けっこう可愛いじゃねぇか…。
オレは今吉さんにバレないように、
反対側の席に座った。
間に植木があり、壁にもなるし、
会話も聞きやすい。
若【テーブル】
[植木][植木][植木][植木]
今【テーブル】女
すみれ
ーーーーーー窓ーーーーーー
「ワシの彼女や。これで納得やろ?」
「そんなの…嘘かもしれないし…」
「彼女でもない女と
ずーっと手なんか握っとるか?」
そう。それが気になっていた。
さっきからずーーっと、
今吉さんとすみれは手を繋いでいた。
今吉さんは楽しそうに
繋いだ手を自分の太ももに乗せたり、
すみれの太ももに乗せたりしてる。
あーーっもうっ。なにしてんだよ⁈
「じゃあ…キスして?
今ここでキスしてくれたら諦める。」
はぁ⁈
ガタンッ…。
オレは思わず
立ち上がりそうになってしまった。
「ん?」
やべ…っ。気づかれたか⁈
オレは慌ててテーブルに突っ伏して、
体を隠した。
あの女、なに言ってんだ⁈
「あの、それはいくらなんでも…」
すみれはさすがに驚いたのか、
急に慌てだした。
「なんで?付き合ってるんでしょ?」
「だからってこんな人前で…」
「はぁ…。ワシはかまへんで?」
な…⁈なんだと⁈
「ちょっ…今吉っ⁈」
「ほんまにキスしたら、
諦めてくれるんやな?」
「…うん♪」
「今吉…っ。待って…。」
「待てへん…悪いな。」
今吉さんがすみれの肩を抱いた。