第5章 -彼女-(若松孝輔)
その日から前よりも
すみれと帰るようになった。
すみれと帰るようになって、
バスケの調子も
よくなってる気がする。
なのに…
なのに、なのに…!!
オレの調子をガタ落ちさせることが
起こった…。
「頼むわ〜。このとぉりや。」
部活前、体育館にすみれが来ていた。
そしてなぜか、
今吉さんがすみれに頭を下げていた。
「…しょうがないなぁ。
でも、なんか騙すみたいでヤダなぁ。」
「噂をちぃっと利用するだけや。
黙って横にいてくれればええから。
悪いな。よろしゅう頼むわ。」
「明日のお昼、おごってよね?」
「おう。まかしとき♪」
そう言うと今吉さんは
監督の所へ行ってしまった。
「なんの話だよ?」
今吉さんが行ったのを見計らって、
オレはすみれに話しかけた。
「あ〜なんかね、今吉が
彼女のふりしてほしいって。」
「はぁ⁈なんだよ、それ⁉︎」
「若松〜!うっせぇぞ!」
諏佐さんのツッコミは無視した。
「今吉が他校の女のコに告白されて、
彼女いるって断ったらしいんだけど、
そしたら、彼女見ないと諦められない!
ってつきまとわれてるらしくて…
それで…代役?」
「そんなの‼︎そんなの断れよ‼︎」
「え?だから、今吉も断ったけど、
相手がしつこくて…」
「あのなぁ‼︎今吉さんじゃねぇよ!
お前だよ!」
「うん…でも…」
「もう知らねぇっ!
もうそのまま今吉さんの
彼女になりゃいいだろ⁈」
「ちょ…孝ちゃん…?」
オレはそのまますみれを無視して
コートに入った。
その日のオレの調子は最悪だった。