第5章 -彼女-(若松孝輔)
「それはそこで仕事から逃げ回ってた
キャプテンのせいだもん。
文句はキャプテンにどーぞ♪」
すみれはニコッとして言った。
「若松、ワシに何か文句あんのか〜?」
日誌を書きながら、
顔をあげずに今吉さんが言う。
「オレが言えるかっ‼︎」
「あ、孝ちゃん、なんか付いてる!」
すみれはステージに立って、
オレの頭に手を伸ばした。
ふわりと甘い花の香りがした。
すみれの匂いだ…。
「ほら…糸くず?」
すみれはオレの頭についていた
糸くずを取っていた。
Tシャツ着たときに付いたのか?
「おう。わりぃ…。」
「ココからだと孝ちゃんの頭も届くね。
よしよーし(笑)♪」
いきなりオレの頭を
わしゃわしゃして触り出した。
「おいっ。やめろって!」
「孝ちゃんも昔は小っちゃくて
可愛かったのになぁ。」
「ほれ、書いたで?これでえーやろ?」
「ん?できたの?」
今吉さんの声で、
すみれはオレから離れて、
元の場所に座った。
今吉さんがオレに向かって
一瞬ニヤリと笑った気がした。
気のせいか…?
「どや?これでえーやろ?」
「うん♪やればできるじゃない♪
明日もちゃんとやるんだよ?」
すみれは今吉さんの頭を
ポンポンとして、
ステージからピョンと
おりようとした。
できるわけないくせに…。
「自分、危ないで?」
バランスを崩したすみれを
今吉さんは抱きかかえ、
ステージからおろした。
「きゃ…。あ、ごめんね、今吉。
ありがとう……って、今吉?」
今吉さんはすみれを離さず、
そのまま抱きしめていた。
すみれ越しにオレを見た今吉さんは、
やっぱりニヤニヤしていた。
なんなんだよ⁈
「今吉…?どしたの?」
当のすみれは一瞬焦っていたが、
キョトンとしていた。
「ワシら、付き合うとるらしいし、
それっぽいことを
ちぃっとしてみた感じやな♪」
「も〜。今度は誰に言われたの?」
「いろんな人にやで〜?
な〜若松?若松はどう見える?」