第46章 -大人-(虹村修造)
「おまえ、わかってる?
こんな…すんげぇ柔らかくてすべすべで…」
「やっ…ぁ…っ…ちょっ…」
「…っ⁈男はおまえの腕とかだけでも、
見てるだけで、そぉゆうコト考えてんだよ。
…ったく。青木とか、すげぇ言ってたかんな?」
修造くんはそう言うと、
わたしの二の腕から手をはなして、
ジッとわたしの目を睨むように見つめた。
「青木さんて…すごい優しくて、
全然そんなふうに見えなかったけど…」
「だーかーらっ‼︎
そんなふうに見えないだけで、
そぉゆうコト考えてんの。」
「わ…わかったけど…」
また、修造くんが
デコピンをしてきそうだったので、
わたしはとりあえず頷いた。
「でも、修造くんは、男の人なのに、
わたしのコトはそんなふうに見てないじゃん。」
「は…?」
「だから、こんなコトできるんでしょう?
妹を心配してるお兄ちゃんみたい。」
自分で言っていても、
なんだか虚しくなってしまうけど、
気まずくなりたくなくて、
一生懸命笑顔を作りながら、
修造くんから離れ、
痺れる脚をさすりながら、
立ち上がろうとすると、
修造くんにまた手を握られ、
その場に座らされてしまった。
「おまえ、本気で言ってる?」
さっきも怒ってはいたけど、
さっきまでとは全然違う
修造くんの鋭い視線が突き刺さる。
「え…?
娘を心配するパパのほうが正しかった?」
わたしはその視線から逃げたくて、
また笑顔を作って冗談ぽく答えると、
修造くんは今日一番のため息をついた。
「オレはおまえの兄貴でも父親でもない。」
「いつも妹みたいって言ってるじゃん。」
「"妹みたい"って思ってないと、
手出しちまうだろーが。」
「…??」
「おまえ…年上の彼氏が欲しいんだよな?」
「え…?……っ⁈」
修造くんのことばに何も言えないでいると、
わたしの手を握っていた修造くんに
そのまま手を引かれ、
わたしはまた修造くんの腕の中にいた。
「オレじゃダメなのか?」
「…っ⁈なん…で…?
だって…修造くん、わたしのコトなんか…」
「好きだ。」
思ってもいなかった修造くんのことばに
思考は追いつかないけど、
たしかに聞こえた修造くんのことば…
「わたし…も…諦めなきゃって思って…」
「…なんでだよ?」