第38章 -再会-(青峰大輝)
「えっ…と…このフロアの右側は
わたしたちのいる営業戦略部で、
左側はマーケティング部。
総務とかシステム部は下のフロア。」
他の部署のOJTを見ていると、
どこもフロア案内からしているようで、
わたしも同じようにフロア案内から始め、
下のフロアへ移動するため、
2人でエレベーターを待っていた。
それにしても…なんて偶然だろう。
わたしは気だるそうに歩く、
王子さま…もとい、
新入社員の青峰くんを
チラリと盗み見た。
てゆぅか…新入社員だよね⁈
…初々しさの欠片もない。
スーツの着方も、
高校の制服と変わらないし…。
クスッ…
「なに笑ってんだよ⁈」
…っ‼︎
「べ…別に…」
うぅ…王子さま、怖いっ‼︎
てゆぅか、理想抱きすぎてた‼︎
てゆぅか、敬語は⁈
わたし、先輩だってばーー‼︎
理想と現実ってやっぱ違うんだな。
そう思いながら、
ちょうどきたエレベーターに乗り込み、
総務のフロアへ行く。
「こっちのドアの奥が総務ね。…きゃっ‼︎」
突然グイッと青峰くんに腕を引かれ、
わたしは青峰くんに
後ろからギュッと肩を押さえられていた。
「あ…あのっ‼︎」
な、なんで、こんな廊下で急に…⁈
ガラガラ…
「すみませーん、助かります。」
後ろから重そうな台車を押して
業者さんが来ていた。
「あ!すみません!どうぞ!…⁈」
慌ててドアを開けようとすると、
ドアはもう開いている。
…⁈
ふと見上げると、青峰くんが、
わたしよりも高い位置で、
ドアを押さえていた。
「あ…ありがとう。」
「…別に。」
青峰くんはそっけなく答えるが、
わたしはこれだけで、
青峰くんの印象が、
またガラリと変わった。
…やっぱり…王子さまかもしれない。
それから、総務のフロアへ行き、
そこを通過すると資料室だった。
ガチャ…
「ココが資料室ね。
営業用の資料もあるし、あとは、
決裁書の控えは全部ココにあるの。
ま、あんまり使う人いないんだけどね。」
資料はあるけど、滅多に人は来ない。
わたしの息抜きできる場所だった。
「ふぅん…。なぁ?檜原さん?」
青峰くんの呼びかけに振り向くと、
なぜか突然、腕を引かれ、
資料棚に追いつめられてしまった。