第30章 -緊張-(宮地清志)
「えっと…」
スーパーに入って、
わたしは買い出しのメモを取り出した。
「あれ…?なんか増えてる気がする…」
…ドンッ‼︎
「きゃっ‼︎」
「おわっ…⁈」
メモばかり見て歩いていて、
前を見てなかったので、
気がついたら宮地先輩の背中に
思いっきりぶつかってしまった。
「すみませんっ‼︎」
「…ったく。大丈夫かよ?」
うわぁ…どうしよう⁈
最悪だぁ…。
宮地先輩…怒ってるよね…。
「は…はい。あの…
ほんとにごめんなさいっ!」
はぁ…なんで宮地先輩の前だと、
こんなふうになっちゃうんだろ…。
「…メモ、そんだけか?」
わたしが下を向いていると、
突然宮地先輩が、わたしの手の
買い出しのメモを見て聞いてきた。
「えっ⁈は…はい‼︎」
「ふぅん…。」
わたしの手にあるメモをジッと見て
何かを考えているような宮地先輩…。
「あの…どうかしまし…⁈」
ヒュッ…
わたしが聞き終わる前に、
突然、宮地先輩は、
わたしの手からメモを取り上げ…
わたしの手をギュッと握った。
「宮地先輩っ⁈」
わたしはビックリしすぎて何も言えず、
ただ宮地先輩を見上げるしかなかった。
「おまえがメモ見てたら、
またぶつかるだろ⁈」
そ…それはあんまり否定できないけど…。
「で…でも…手…⁈」
「いーから‼︎繋がれとけ‼︎」
「え…⁉︎で…でも…‼︎」
「うっせぇ‼︎それ以上言うと焼くぞ‼︎」
「…っ⁈は…い。」
宮地先輩のことばに圧倒され、
それ以上何も言えなかった。
宮地先輩は、わたしと手を繋いだまま、
買い出しのメモを見て、
どんどん進んで行く。
わたしは人生で一番といっても
過言ではないくらい緊張していた。
気がついたら、買い物も終わっていて、
大きなビニール袋2つ分にもなった。
「あ…!1コ持ちます!」
「いいって。」
「でも…」
「オレが来た意味ねーじゃん。
それ以上言うなら、刺すぞ⁈」
……。
結局、宮地先輩が
2つとも荷物を持ってくれた。
やっぱり宮地先輩は優しい…。
でも、さっきまで繋がれていた手が、
少し淋しかった。
宮地先輩は…
なんでわたしと
手を繋いでくれたんだろ…?