第28章 -王子-(黄瀬涼太)
「この挿絵…ココに似てるっスね。」
そう言って黄瀬くんが開いたページは、
たくさんの本に囲まれた
不思議な部屋で、本棚を背に、
王子さまがお姫さまにキスをしていた。
いわゆる壁ドン?
壁ドンて昔からあったんだなぁ…。
「えっ⁈」
挿絵を見てボーッと
そんなことを考えていたら、
突然黄瀬くんが言った。
「すーっち先輩…」
「なぁに?」
ふと黄瀬くんを見上げると、
真剣な眼差しでわたしを見ていた。
ドキン…!
「オレ…今は…サボるために
来てるんじゃないっス!」
「え…?」
ドンッ‼︎
「すーっち先輩に会いたいとき…
ココに来てるんスよ。」
「黄瀬くん⁈」
突然、本棚を背に
黄瀬くんに追い詰められてしまった。
この童話の挿絵と…一緒…。
「オレ、本気っス‼︎
すーっち先輩のコト…好きっス!」
「黄瀬くん⁈」
黄瀬くんは
どんどんわたしに近づいてくる。
「すーっち先輩…オレ…」
…チュ。
黄瀬くんは突然わたしにキスをした。
そして、黄瀬くんはそのままジッと
わたしを見つめてくれている。
「オレも…この童話の王子みたいに…
すーっち先輩の王子に…
なれたっスかね?」
…っ⁈
わたしはきっと今真っ赤だ。
でも、わたしも勇気を出して…
素直に気持ちを伝えれば…
この童話のお姫さまみたいに…
なれるのかな…。
目の前の王子さまを…
信じていいんだよね⁈
「わ…わたしも…好きっ‼︎」
「…‼︎やったぁ‼︎」
黄瀬くんが
ぎゅーっと抱き締めてくれる。
挿絵にはない…
黄瀬くんとわたしの
新しいお話の始まりだった。
ステキなステキなお話…。
---End---