第23章 -同盟-(紫原敦)
声のするほうを振り返ると、
まさに鬼の形相…の紫原くんがいた。
「紫原くん⁈」
「室ちん、なにやってるの?」
紫原くんはわたしを無視して、
氷室先輩に詰め寄った。
「何って…すみれちゃんと
話してただけだよ?
アツシこそどうしたんだい?」
「べ〜つに〜」
紫原くんはずっと氷室先輩を
睨みつけていた。
な…なんで⁈
いつもあんなに慕ってるのに…。
「アツシ?
”何が”好きなのかを
ちゃんと言わないと、
すみれちゃんは誤解したままだよ?
それじゃあ、いつまでたっても
お菓子しかくれない。」
…?誤解⁇わたしが…?
「すみれちゃん、カップケーキは
次の機会に期待しとくよ。
今もらうとアツシに怒られそうだ。」
氷室先輩はそう言うと、
紫原くんの腕をポンとして、
体育館に入っていってしまった。
紫原くんは黙ったままだった。
「紫原くん…?あの…ゴメンね。」
「なに謝ってんの?」
紫原くんはわたしをジッと見ていた。
「カップケーキ…
お昼休みに渡せなくて…。」
カップケーキの紙袋を差し出して、
紫原くんを見ると、
少しだけ表情が和らいでいた。
「カップケーキもほしかったけど…」
…?
紫原くんが途中で言い淀む。
「どうしたの?」
…ギュ。
「きゃ…っ。紫原くん⁈」
わたしは紫原くんに抱き締められ…
紫原くんに埋れていた。
「オレ、すみれちんがほしい。」
「えっ⁈…紫原くん⁈」
紫原くんは、
わたしを抱き締めてくれる力を
いっこうに緩める気配がない。
「オレ、まいう棒もミルクッキーも、
すみれちんが作るお菓子も好きだけど…
すみれちんのコトが1番好き!」