第23章 -同盟-(紫原敦)
紫原くんいるかな…
お昼休みにあげるね〜と言っていた、
カップケーキを手に、
わたしは放課後の体育館を覗いた。
今日に限って、
お昼休み早々委員会の先生に呼ばれ、
お昼休みは潰れてしまい、
4限は男女別の体育、
5限は選択授業で、
わたしは音楽で紫原くんは美術。
5限のあとすぐにHRが始まり、
HR後は委員会があって、
紫原くんと話す時間が全くなかった。
紫原くん、カップケーキのコト、
もう忘れてるかな…。
でも、せっかく作ったし、
やっぱり食べてもらいたい‼︎
そう思って体育館を覗いているが、
紫原くんの姿は見当たらない。
「あれ?すみれちゃん?」
「氷室先輩!」
後ろから氷室先輩に声を掛けられた。
紫原くんとよくいるからか、
氷室先輩は、いつのまにかわたしにも
優しく話し掛けてくれるようになった。
「アツシを探してるの?」
「はい。」
「あいつ、部室に戻ったと思うよ。」
「そうですか。
じゃあ、もう少し待とうかな。」
「…アツシに?」
わたしの持っている紙袋を見て、
氷室先輩がニッコリする。
「はい。カップケーキ作って…
あげる約束してたんですけど、
お昼休みに渡せなくて…。」
「愛されてるなぁ…アツシは。」
「えっ⁈」
氷室先輩のことばに
思わず赤くなってしまった。
「アツシもすみれちゃんのコト、
大好きだしね♪」
「…っ⁈」
氷室先輩の”大好き”ということばに
思わず固まってしまう。
「紫原くんが”大好き”なのは、
”お菓子”ですから。」
強がって笑顔を作る。
お菓子同盟がなかったら、
わたしは紫原くんと話せない…。
「絶対そんなことないと思うけど?」
「なんで言い切れるんですか⁈」
…っ‼︎
「あ…すみません!」
思わず強く言ってしまい、
わたしは氷室先輩に謝った。
「大丈夫だよ。」
氷室先輩はクスクス笑っていた。
「あ、よかったら、
氷室先輩も食べますか?
たくさん作ったんです。」
恥ずかしくなってしまい、
お詫びも兼ねて氷室先輩に
カップケーキを1つ差し出したが…
「ありがとう。
でも、今日は遠慮しとくよ。」
ニッコリ満面の笑みで
氷室先輩に断られてしまった。
「室ちん…何してるの?」