第23章 -同盟-(紫原敦)
「あ♪おはよう♪紫原くん♪」
「すみれち〜ん…
まいう棒…もしくはミルクッキー…
オレ…もう…ムリ〜」
朝練終わりの紫原くんが、
教室に入ってくるなり、
机に突っ伏してしまった。
「えっと…ほら!
ミルクッキーならあるよ!」
わたしはバッグの中から、
ミルクッキーを取り出して、
紫原くんの目の前に見せた。
「わ〜〜い♪やったぁ♪
すみれちん、大好き〜♪」
さっきまで項垂れていた紫原くんは
どこへ行ったんだか…。
クッキー1つで大喜びする
大きな体の紫原くんはとても可愛い。
「はちみつ入りの新商品だよ〜♪」
「へぇ…たひかにおいひい♪」
(へぇ…たしかにおいしい♪)
わたし…檜原すみれと紫原敦は、
お菓子同盟を結んでいる。
まだ入学したばかりの頃、
隣の席の紫原くんが、
今日みたいに朝練終わりに
疲れ果てていた時に
わたしがお菓子をあげたのがキッカケ。
しかも、その時あげたのが、
たまたま、秋田限定のまいう棒で、
紫原くんは感激して、
すぐに元気になっていた…(笑)
そして、その日の夕方、
紫原くんがお礼にくれたのが、
わたしの大好きなミルクッキーの、
東京限定バージョン!
わたしは紫原くんが神様に見えた。
それ以来、
お菓子は紫原くんと分け合う…
という、お菓子同盟が結ばれた。
紫原くんがくれるのは、
まいう棒限定だけど(笑)
そんなことを思い出していたら、
ミルクッキーを食べて復活した
紫原くんにジッと見られていた。
「あ!えっと!今日ね、
カップケーキ作ってきたんだ♪」
わたしは慌てて話を振った。
「ほんと⁈食べたーい‼︎」
「今ミルクッキー食べたでしょ?
カップケーキはお昼休みね♪」
「ちぇっ。」
拗ねる紫原くんも可愛かった。
「すみれちんの手作りお菓子、
美味しいから楽しみ〜♪」
「紫原くんにそう言ってもらえると
嬉しいな♪」
「そ〜ぉ?だってほんとだもん。
すみれちんだ〜いすき♪」
……。
紫原くんの”大好き”は、
”わたし”じゃなくて”お菓子”…
最初は嬉しかったのに、
実はこの頃ちょっと不満…。
紫原くんのコト…
好きになっちゃったんだもん。