第20章 -年上-(黄瀬涼太)**★
喫茶店を出て、
オレはあの公園に向かい、
すぐにしずかっちにメールをした。
『公園に来て。お願いだから…!』
しずかっちは来ないかもしれない。
でも、オレは待っていた。
しずかっちと初めて会った…
あのブランコで。
しずかっちから返信はない。
青柳さんと別れたのは7時前…
メールをしたのは7時半頃…
今はもう10時半だった。
やっぱりしつこかったっスかね…
「涼…ちゃん⁈」
諦め掛けたその時、
しずかっちが駆け寄ってきた。
「な…んで?」
「なんで?って…。
しずかっちを待ってたんスよ。」
オレはブランコに座ったまま、
しずかっちを見上げた。
「そうじゃなくて‼︎
もうメールしないでってこないだ…
それに何時間たってると思ってるの⁈」
「ん?3時間くらいっスかね?」
オレは腕時計を見て答え、
しずかっちの手を取った。
「ちょっ…わたし…誠が…っ!」
「もう…全部聞いたっス…」
手を振りほどこうとするしずかっちを
オレはギュッと押さえて抱き締めた。
「涼…っ⁈聞いたって…⁈」
「青柳さんが話してくれたっス!」
「えっ…⁈」
「ゴメン…しずかっち‼︎」
オレはさらにギュッと
しずかっちを抱き締めた。
「しずかっち…辛かったのに…
オレの話ばっかり…
オレ…しずかっちのコト何も…」
「涼ちゃん⁈
そんな…涼ちゃんは…何も…」
オレはしずかっちを
あのブランコに座らせ、
オレはその向かいにしゃがみ込み、
しずかっちを見上げた。
「ちゃんとしずかっちの話聞くから…
誤魔化さないで?
それに…遠慮もしないで?
強がらなくていいんスよ?」
「涼…ちゃん…」
しずかっちは震えていた。
オレがそっとしずかっちの手を握ると、
しずかっちはゆっくり話し始めた。
「わたし…好きだったんだよ。
浮気してたのも…知ってた…
でも…戻ってくるって…」
しずかっちはいつのまにか泣いていた。
オレはそっとしずかっちの涙を拭う。
「まだ…彼のコト…
忘れられないっスか?」
オレが聞くとしずかっちは、
少しだけ考えてから、そっと言った。
「ううん。もう忘れたよ…」
「ほんとっスか?」
涙目で微笑むしずかっちは、
まだムリしているようだった。