第20章 -年上-(黄瀬涼太)**★
「ほんと…。
あの時涼ちゃんに会って…
救われたのはわたしのほう…。
本当にありがとう。」
久しぶりに…しずかっちが
オレに笑顔を向けてくれた。
「こないだは…
無理矢理しちゃったっスけど…
オレ…本当にしずかっちが好きっス!」
今度は衝動的にではなく…
落ち着いて…真っ直ぐ気持ちを伝えた。
「涼ちゃん…ありがとう。」
しずかっちはオレの頭を撫でてから、
ゆっくりオレを見て話し出した。
「あの時涼ちゃんと話して…
涼ちゃんみたいな真っ直ぐなコが…
まだちゃんといるんだ…
って、本当に救われたの。
涼ちゃんからのメールも嬉しかったし、
会社帰りに会えるのも…
すごい楽しみだった。」
「…⁉︎じゃあ…なんで…⁉︎」
それって、しずかっちもオレのコト…⁈
「一回りも違うんだよ⁈12コも…。
涼ちゃんは高校生だし、
モデルもしてるし、バスケもうまいし…
これからいろんな出会いがあるのに…
わたしなんかが
涼ちゃんの未来を潰せないよ。」
しずかっちは子どもを嗜めるように
オレを見て苦笑いしていた。
「…っ⁈そんな理由っスか⁈」
「そんなって…‼︎」
「オレはしずかっちが好きなんス‼︎
本気で‼︎真剣っスよ‼︎
そんなよくわかんない理由で…
決めつけないでほしいっス‼︎」
「よくわかんない理由じゃない‼︎
今はよくても…いつか…
涼ちゃんだってわたしを
嫌いになるかもしれないし、
わたし、28だよ?もうすぐ30なの!
高校生と付き合うなんて…犯罪だよ?」
…っ⁈
オレは思わずしずかっちを抱き締めた。
「涼ちゃん…っ⁉︎」
「じゃあ…待っててほしいっス‼︎
卒業まであと2年もあるし…
年の差は変わんないっスけど、
卒業したら、高校生じゃないっス‼︎」
抱き締めたまましずかっちを見ると、
また涙目になっていた。
「涼…ちゃ…」
「強がらなくていいんスよ?
しずかっちの…素直な気持ちを
聞かせてほしいっス。」
オレはまたしずかっちの涙を拭った。
「………好き。」
しずかっちは絞り出すように
小さな声で言ってくれた。
「しずかっち…‼︎」
オレは強く強く…
しずかっちを抱き締めた。
しずかっちを絶対離さない。
悲しませたりしない。
心にそう誓って…。
---End---