第19章 -誤解-(宮地清志)***
「な、なにしてるの⁈」
裕也の…部員たちの着替えくらい、
マネージャー3年目ともなると、
さすがに見慣れてしまったが、
2人きりで家庭科室で脱がれると、
さすがのわたしもテンパってしまった。
「はぁ。
しょーがねーから貸してやるよ。」
そう言って裕也は、
今脱いだTシャツをわたしに差し出す。
「な…っ⁈でも、裕也が…。」
「あぁ…まぁ、さっきまでは
ユニフォーム着てたし、
午前中着てたヤツ着て帰るわ。
コレ、さっき着替えたばっかだし、
一応、汗臭くねーかんな。」
頭を掻きながら、
裕也がそっぽ向いて言う。
「でも、午前中のTシャツは
汗かいてるでしょ?
裕也、また着るの気持ち悪いし…
大丈夫だってば。ね?」
裕也にTシャツを押し返す。
「あぁっ‼︎もうっ!
着ねぇなら、襲うぞっ!
つか、○×★◻︎▲…っ‼︎」
「わ、わかった‼︎わかったから!」
裕也のことばの威力に負け、
申し訳ないと思いながらも、
ありがたく裕也に甘えるコトにした。
「ほんとにゴメンね。ありがと。」
「…おう。」
…⁇
なぜだか、裕也がしおらしい。
「お礼に夜ジュース奢るね♪」
「お礼なら、
キスとかのがいーんだけど?」
裕也が上から
グイッと顔を近づけてきた。
はぁ…。どのへんが
しおらしかったんだっけ…⁇
前言撤回…。
「はいはい。
じゃあ、お言葉に甘えて着替えるから、
ココ出てくれるかな?
ついでに大坪に事情話しといて?」
裕也のほっぺをつねる。
「ってぇなーっ!着替え手伝うか?」
「そぉいうのいいからー。
あ!手伝うなら、
アレ持ってっといてくれる?」
わたしは洗い終わった、
ドリンクサーバーを指差した。
「はぁ⁈ふざけんなっ。」
裕也は文句を言ったが、
わたしは知っている。
裕也は絶対に持ってってくれるコトを。
「ったく。人使い荒いよな。
さっさと着替えて早く来いよ?」
やっぱり文句を言いながらも、
ドリンクサーバーを持って、
家庭科室を出て行った。
なんだかんだ、
優しくて気遣い屋の裕也。
宮地にそっくりだなぁ。
そんなことを思いながら、
わたしは家庭科室のカーテンを閉め、
急いで裕也のTシャツに着替えて、
皆の元へ戻った。