第19章 -誤解-(宮地清志)***
-回想-(30分前)
バシャーーーーーッ‼︎
「きゃあ…っ。」
うわぁ…やっちゃった…
ビッショビショ…
さっき使ったときに
わかってたはずなのに…
作業しやすいから…と、
ドリンクサーバーを洗うために
相手校のマネージャーさんが
家庭科室を使わせてくれていた。
とても助かったけど、
使い慣れてない学校の
家庭科室の水道の持ち手は、
水を出すときの上下が、
ウチの学校と逆だった。
それをいつものクセで、
水を止めるときに上にあげたら…
そりゃ、水がマックスで出るよね…
そりゃ、そうだよね…
今回はマネージャー、
わたししか来てないから
ただでさえ仕事多いのに〜〜っっ。
はぁ…床ビショビショ…
それにこのTシャツとジャージ…
乾かない…よね。
とりあえず、
Tシャツなんかあとでいっか。
もう民宿戻るだけだし…。
軽く顔をタオルで拭いてから、
わたしはとりあえず床を拭いた。
ガラッ…
「すみれっ‼︎」
床に這いつくばって拭いていると、
突然裕也が入ってきた。
「すみれ”さん”でしょ?」
床を拭きながら、
いつものようにたしなめる。
「はぁ⁈すみれだって、
オレのコト呼び捨てじゃん。」
「それは宮地と
区別するためだからーー。」
裕也が入ってからずっと続いてる
お決まりのやり取りだった。
兄の宮地清志がわたしのコトを
”すみれ”と呼ぶせいか、
後輩なのにわたしのコトを
ナマイキにも”すみれ”と呼ぶ。
わたしはずっと兄のほうを
”宮地”と呼んでいたので、
今更変えるのも変だし、
弟のほうを名前で呼んでいた。
「そんなにオレの
彼女になりたいのかよ(笑)?」
「裕也の彼女なんて苦労しそうで、
こっちからお断りです(笑)」
最近はこんなやり取りまで
追加される始末だ。
「てゆぅか、何やってんだよ?
おせーよ。そろそろ行くぞ?」
「あ、ゴメンゴメン。」
「つか、なんで床なんか…」
「ちょっとやらかしちゃって…。
よし!こんなもんか。」
床はキレイになったので、
わたしは立ち上がった。
「クシュンッ。」
「風邪かよ?…って…おいっ!」
「ん?なぁに?」
いつもうるさい裕也が黙り込む。