第2章 -百合-(氷室辰也)★
-氷室side-
ゆりなと出会った次の日、
オレはとんでもない失敗を
したことに気づいた。
「やっちゃったな…。」
「なにを〜?」
思わず声に出ていたようだ。
部屋でお菓子を食べていたアツシが
オレのひとり言にこたえた。
「いや、ちょっとね。」
「そういや、室ちん、
昨日帰り遅かったよねー。
仲村先生のトコ行っただけなのに。」
「ん〜ちょっと色々あってね。」
「色々ってー?」
オレはかいつまんで、
昨日起こったことを話した。
「で、その助けた女のコの
連絡先でも聞き忘れたってわけー?」
「…⁈なんでそう思うんだ?」
「んー?だって今の話の流れで、
”やっちゃったな”って
室ちんが思うトコ、
それくらいしかなくなーい?」
アツシはぼーっとしているようで、
かなり鋭いから困る。
「アツシにはかなわないな。
そうだよ。
名前と学校くらいしか知らない。
あ、あとバスケ部の
マネージャーしてるって言ってたな。」
「バスケ部〜?どこの学校?」
「秋田東高校。」
「あー知ってるー。
ウインターカップの予選の
最終戦で戦ったけど、
まぁまぁなのはナントカ山って
センターの人くらいかなー。」
ナントカ山…?
「それって”香山”じゃないか?」
「んー。そんな感じだったかもー。」
ナントカ山って…。
香山のほうがよっぽど短いのに。
予選はたしか対戦相手は
全校無得点だったと聞いてる。
それでも香山という奴…
アツシが覚えているとは…。
「でも、そのコも
仲村先生のトコ行ってたんでしょ?
なら、そこでまた会うんじゃない?
それか仲村先生に聞いちゃえばー?」
それもそうだな。
お互いバスケ部だし、
どうにかすればまた会える気がする。
と、色々考えていたのだが、
ゆりなとの再会は、
思いのほかすぐに実現した。