第17章 -友達-(福井健介)
「結構キャーキャー言ってたって
聞いたけど?まだ大丈夫なのか?」
旧校舎の中に入り、
そっとすみれの顔を覗き込む。
「い、言ってないよ!
それに、大丈夫だってば!」
すみれは少しオレと距離をとった。
くそっ…そんなにイヤなのかよ?
ガタン‼︎
「キャッ…」
…⁈
空き教室の奥から物音がした。
「大丈夫かよ?
つか、もっとこっち来いって。」
「い、今のは音に
ビックリしただけだも…⁈」
ガタガタガタガタ…ッ‼︎
「きゃあっ!」
さすがに少しビビったのか、
すみれはやっと、
オレの隣まで戻ってきた。
「大丈夫だって。
つか、アレ、去年もあったぞ?
ただ中で机揺らしてるだけだ。」
「あ…うん。そう…だよね。」
すみれは少し
落ち着きを取り戻したようだった。
「そうだよ。屋上までだろ?
ほら、階段行くぞ?」
「うん。」
…っ⁈
階段をのぼりかけた時、
Tシャツの裾をクイッと引かれた。
「こ…ココ…持っててもいい?」
「ん?…あぁ。ちゃんと持っとけ。」
「…ありがと。」
…ドキッ。
可愛いじゃねーかよ。
こんな時に可愛いコトすんなって。
「あーすみれさぁ…」
「ん?なぁに?」
「なんつぅか…さっきも言ったけど、
オレ、女子とって初めてなんだけど…」
「…?うん。」
「その…劉なんかは…
やっぱ手繋いだりとかしたのか?」
「えっ⁈あの…えっと…」
「なに焦ってんだよ?」
「その…手繋いだっていうか…
怖くて捕まっちゃったというか…
さ、最後のほう…ちょっとだけ…」
そう言ったすみれは、
まだオレのTシャツの裾を持ったままだ。
「ふぅん…で、今は大丈夫なのかよ?」
「え…?」
「ほら…。」
オレはすみれの手を取った。
「福井っ⁈あの…えっと…」
「いいから!オマエさぁ…」
「なぁ…に?」
「なんでそんなに強がってんの?
オレとオマエの仲だろ?」
「え…っ?」
「ま、だからこそ、逆に
緊張するってのもあるけどな。
オレが緊張するわ(笑)」
笑いながら言ったが、
自分に言ったことばでもあった。