第17章 -友達-(福井健介)
「3年間で1番冷たいペアかもー!」
小走りでオレの横にきたすみれが、
口をツンととんがらかせて、
スネたように言う。
「あ?んなコトねーだろ?つか、
オレ、よく考えたら女子初めてだわ。」
「初めての女子が
わたしだなんて、感激でしょ♪?」
すみれはクスクス笑いながら、
冗談のつもりで言っているが、
すみれのことばは図星だった。
「女子ね〜?…?どした?
オマエ、遅くね?」
旧校舎が近づいてきて、
すみれの歩くスピードが、
少しずつ遅くなってきていた。
「お…遅くないー‼︎」
すみれの歩幅がまた戻り、
慌てたように話を元に戻す。
「わたし、1年のときは岡村で〜、
去年は劉だったなぁ。」
…知ってる。よーく覚えてるよ。
毎年密かに凹んでたんだから。
またオレの横に来たすみれが
懐かしそうに言った。
「オレも去年、岡村だったよ。」
「あはは♪覚えてる覚えてる♪
あの時笑っちゃったもん。
でも、オバケより岡村のほうが
怖いかも〜って思ったら、
なんか怖くなくなったし、
岡村、見た目は怖いけど、優しいし、
クマさんみたいで楽しかったよー。」
「あ〜そうかよ。
劉はどうだったんだよ?」
「劉?劉はね〜あのまんまかな。」
「は⁈」
「なんてゆうか、優しいし、
上手にリードしてくれる感じかな。
なんかさりげない感じ?」
「なんだよ、それ?」
「うーん…ウチの部って
基本皆優しいけど、
劉はスマートっていうか…
あと氷室もスマートだよね。」
「氷室は肝試し、
行ってねーじゃねぇかよ?」
「氷室は普段からスマートだもん。」
なんだよ、それ。
まぁ、たしかになぁ…。
「つか、オマエ、
意外と怖がりってほんと?」
実は毎年気になっていた。
岡村も劉も脅かし役のヤツらも
口を揃えて言っていた。
『すみれは怖がりだ』…と。
それだけならまだいいが、
「怖がり方が可愛かったアル」とか
劉の奴が抜かしやがる。
他の奴らも口々に
似たようなことを言っていた。
「な、なんで⁈
ぜんぜん怖がりじゃないってば!」
そのくせコイツはさっきから、
オレの前で1回も叫んだりしない。
怖がりってホントかよ?