第14章 -告白-(虹村修造)★
「向こうも満更でもないんじゃない?
お姫さま抱っこなんて、憧れちゃう♡
虹村くんて一瞬怖そうだけど、
カッコいいし♪
ひかり、付き合わないの?」
悦子がニヤリとして
わたしの顔を覗き込む。
「付き合うとかそういうんじゃ…。」
「ま、ひかりには平澤がいるかぁ。」
「なんでそこで平澤くん⁈
平澤くんは友だちだよ。」
「(平澤…可哀想…。)」
「なにため息ついてるの?」
「あ、ううん…。」
「じゃ、バレンタインあげたら?」
「さっきチョコいらないって
食堂で友だちに言ってたーー。」
チョコ…あげたかったんだけどな。
ただでさえ、変なあだ名とか
噂されちゃってるし、
あげたら迷惑だよね…。
「そこー!うるさいぞ!」
やば…っ。
音楽家のDVD観るだけだから、
油断してた。
先生に注意され、
慌ててわたしたちは口を閉じたが、
今度はノートで筆談を始めた。
[それって小学校の時のことが
原因なんじゃない?]
[?]
わたしが大きくハテナマークを書くと
悦子が小さく頷いた。
[王子さま、小6の時、
2人のコからチョコもらって、
どっちか選んでって
迫られたんだって。]
なにそれ…⁈小学生で⁈すご…
わたしは思わず目を見開いて
驚いてしまった。
悦子はさらにノートに書き込む。
[王子さまはその2人と
ろくに喋ったコトもないし、
両方断ったら、
女子同士で喧嘩になって、
かなりもめたんだって〜。]
[ウチの部の後輩情報☆]
そこまで書くと
悦子はクルンとペンをまわした。
[尚更チョコあげられないじゃん。]
わたしがいつもより小さな字で
ノートの隅に書き込むと、
悦子は暫くペンを動かさず、
何かを考え込んでいるようだった。
[最近のひかり、らしくない]
え…?
思わず悦子のほうに顔を向ける。
[前はもっと楽しそうに
虹村くんのこと話してたよ?]
悦子の書いた文字を見てハッとする。
たしかに…。
運動会のあとから少しだけ、
虹村くんと話すのが怖かった。
わたしのせいで目立ってしまったし、
嫌がられてるんじゃないか、
そればかり気になっていた。
[チョコくらいいいじゃん♪
いつもの感じであげちゃえ‼︎]
わたしはジッと悦子の書いた文字を
見つめていた。