第12章 -兄弟-(宮地裕也)
家を飛び出したといっても隣だ。
普段ならインターフォンくらい押すが、
正月で開けっ放しだし、親もいるし、
オレは勝手にすみれの家にあがり、
すみれの部屋に直行した。
ガチャ!
「すみれ、入るぞ!」
ドアを開けてから声を掛け、
すみれの部屋に入る。
「裕也…くん??」
すみれはもう涙は出ていなかったが、
泣きはらした目をして、
ベッドに座っていた。
「おう…。」
つか、来たはいいが、なんて言えば…
「お前、いつまで泣いてんだよ…」
ドサッとすみれの横に座る。
「な…ぁに?」
すみれはまた目に涙が溢れてきていた。
「あのさぁ…
すみれ、兄キに影響されすぎ。」
手を伸ばしてすみれの涙を拭ってやる。
「ゆ…⁈」
「壁ドンなんて、好きな奴相手でも
こっぱずかしいっつぅの…。」
「…⁈好きな…奴って…?」
すみれは目を見開いて、オレを見る。
オレはすみれを正面から見れなくなり、
すみれをギュッと抱き締めた。
「裕也く…っ⁈」
「…好きだ。」
「ほん…とに…?」
すみれは少しオレからはなれ、
涙目のままオレを見上げてきた。
「…っ⁈ほんとだよっ。」
オレはまたすみれを抱き締め、
すみれの顔を自分に押し付けた。
自分の顔を見られて
恥ずかしいのもあるが、
涙目で上目遣いになるのは…ズルい。
「ほんとの…ほんと…?」
「あぁ…。ったく…。」
……チュ。
「ゆ…っ⁈」
「これで信じたか?」
オレは自分の顔を見られないように、
すみれをまた抱き締めた。
「…信じた!」
すみれは顔をあげ、
とびっきりの笑顔でオレを見ていた。